東直己『スタンレーの犬』
2005年10月31日 読書この想いは、本当のものなのか、彼の持つ「チカラ」なのか。札幌に身を寄せる19歳の少年「ユビ」。彼は、老婦人との奇妙な旅を運命づけられた―。書き下ろし長編小説。★☆=1.5
暗く物悲しい印象を受けるストーリーは老婦人と少年の感傷に満ちている。若くして老成した感のある少年に潜む、年相応の情緒、老婦人の諦観。それらを、ひとつ、またひとつと示しながら進む奇妙な逃避行。物語が終焉を迎えた後、読者の胸に残るのは寒々しくて切ない感傷のみ。この「心地よい感傷に浸る」読後感こそが、本書の醍醐味かもしれない。
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