朱川湊人『かたみ歌』
2005年9月18日 読書忘れてしまってはいませんか? あの日、あの場所、あの人の、ちょっと不思議で、しかしかけがえのない思い出を。郷愁と共に蘇る、7つの奇蹟の物語。★=1.0
昭和40年代の下町商店街を舞台にした連作短編。「死」の匂いを強く感じさせる作品群である。すこしだけ「霊」の薫りも。1話目で脇役だった人物を次では主格に据えるなど、下町商店街の人々がクルクルと顔を出す。時には主役を果たし、時には名脇役として。
残念ながら、舞台は私が生まれる以前の世界であり、そこに郷愁を見出すことは出来なかった。しかし、「死」の匂いを強くまとわりつかせた物語には、不思議と胸に迫るものがある。郷愁とまでは言わないが、ほんのりとした淡い切なさを感じることが出来た。
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