加納朋子『てるてるあした』
2005年8月24日 読書親の夜逃げのために高校進学を諦めた照代。そんな彼女の元に差出人不明のメールが届き、女の子の幽霊が…。謎が解ける時、照代を包む温かな真実が明らかになる。不思議な町で暮らし始めた照代の日々を描く癒しと再生の物語。★★=2.0
既刊『ささらさや』の続編、あるいは姉妹本とも言うべき作品。
共通の舞台、共通の登場人物を懐かしく思いながら、主人公・照代が身の不幸を嘆く、その生活を読んでいく。今後も「佐々良」シリーズ?として展開されるのだろうか。
無責任な両親のこと、高校進学は叶わず、田舎町で肩身の狭い思いをする照代の生活を読むと、その境遇を不憫に思いつつ、いかに自分が恵まれていたのかを実感する。
照代も町の人々の優しさ、温かさに触れ、次第に人間として大きな成長を始める。ミステリ的要素は薄いが、単なるハッピーエンドでも、悲しい物語でもない、成長と再生の物語を感じることが出来る。
物語で描かれる世界は、優しくないし、手放しでハッピーな終わり方でもない。それでも、そこに描かれているのは、人の優しさと温かさである。
コメント