北村薫『ニッポン硬貨の謎』
2005年7月30日 読書1977年、ミステリ作家でもある名探偵エラリー・クイーンが出版社の招きで来日し、公式日程をこなすかたわら東京に発生していた幼児連続殺害事件に興味を持つ。以上、引用は東京創元社のサイトより。
同じ頃、大学のミステリ研究会に所属する小町奈々子は、アルバイト先の書店で、50円玉20枚を「千円札に両替してくれ」と頼む男に遭遇していた。
奈々子はファンの集い〈エラリー・クイーン氏を囲む会〉に出席し、『シャム双子の謎』論を披露するなど大活躍。クイーン氏の知遇を得て、都内観光のガイドをすることに。上野動物園で幼児誘拐の現場に行き合わせたことをきっかけに、名探偵エラリーは2つの難事件の核心に迫り、ついに対決の場へ……!
http://www.tsogen.co.jp/wadai/0505_04.html
★★=1.5
副題は「エラリー・クイーン最後の事件」。北村薫がミステリ作家エラリー・クイーンの未発表作品を翻訳したという体裁の、パスティーシュ小説。問題になる事件は、小説家若竹七海が実際に遭遇した「謎」に対する北村薫なりの解答にもなっている。(この「謎」は著名な作家が各々解答を述べたばかりでなく、一般公募までなされた。その結果は『競作 五十円玉二十枚の謎』としてまとめられている。)
クイーンの文体を真似つつ「らしい」書き方をしている点など、現代のミステリに慣れた身には、いささか物足りないかもしれないが、エラリー・クイーンが好きな人には嬉しい一冊だろう。エラリーの著作を論じる部分など、著者がいかにエラリーの作品を好んだかが良くでている。
ミステリ・ファンにはたまらない一冊だが、エラリー・クイーンを読んでない人には、「ふーん」で終わってしまいそう。その点ではマニア向けというべきか。
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