★★★=3.0
福岡旅行に『空飛ぶ馬』を持っていった勢いをかって、再読。このまま、シリーズ全巻再読となりそう。個人的には「夜の蝉」が本シリーズ第1位の作品である。主人公「私」の思いが静かに、そして鮮やかに描かれ、たどり着いたラストの一言。シリーズ白眉の一作だと思うが、いかがだろうか。

常々言っていることだが、北村薫はこのシリーズが一番の良作だと思う。ミステリの面白さに加えて、キャラクターが生き生きとしていて
存在感がある。そしてなによりも、人のやさしさをしっとりと描き出しているかのような雰囲気が良い。時に悪意あふれる人物を描き出しても、この世界は人という儚い存在の「やさしさ」に満ちているのである。

余談。『日本推理作家協会賞受賞作全集』版が双葉文庫からでているが、表紙が違うだけでかなり雰囲気が違う。個人的には、創元推理文庫版の成長が見える?イラストが好き。
『空飛ぶ馬』につづいて女子大生の〈私〉と噺家の春桜亭円紫師匠が活躍する。鮮やかに紡ぎ出された人間模様に綾なす巧妙な伏線と、主人公の魅力あふれる語りが読後の爽快感を誘う。第四十四回日本推理作家協会賞を受賞し、覆面作家だった著者が素顔を公開する契機となった第二作品集。

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