再会した19歳の息子は、ひきこもりだった。働く意欲もなく鬱屈を抱える姿に苛立つ父。二人の心が通いあう日は、果たして来るのか――。清々しい余韻の傑作長編。
★★=2.0
妻子に負い目がある父の苦悩と、ひきこもりの息子が再び歩き出す姿を感動的に描いている。父の視点から見ているので、息子の感覚は理解できない。まさに何を考えているのかわからない状況。それだけに、父の苦悩はクローズアップされている。
話が出来すぎの感もあるが、物語の描く感動を自然体で感じることができるのは、丁寧な描写によるところも大きいのではないだろうか。前半のさり気ない描写があとあと活きてくるなど、丁寧に作られた感のある一冊。

牧場主の台詞に「牛飼ってる牧場には、ほんと不思議な力、魔法みたいなもんがあるんだよ」というのがあるが、まさにそのとおり。そのうえであえて書きたい。「牧場に限らず魔法はどこにでもある。一歩踏み出しさえすれば、すぐそこに」と。

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