絲山秋子『逃亡くそたわけ』
2005年3月13日 読書21歳の夏は一度しか来ない。あたしは逃げ出すことにした。軽い気持ちの自殺未遂がばれて、入院させられた病院から。九州縦断逃亡系青春モノ?
逃げるのに思いつきで顔見知りを誘った。24歳の茶髪で気弱な会社員。
すぐに「帰ろう」と主張する彼を脅してすかして車を出させた。東へ。そして南へ。おんぼろ車で九州の田舎町を駆け抜けるふたりの前にひろがった暑い夏の物語。
非常に刹那的で賛同しがたい点、首を傾げたくなる部分もあるが、切迫した雰囲気は良い感じ。まさに「俺達に明日はない」状態。結構ノンビリしていて、決して緊迫ではないあたりも、なかなか味がある。現状への閉塞感に対するイライラには共感。叫びたくもなるさ。
物語のその後には、厳しい現実がが待っていることは、想像に難くない。それでも、そのときはまた疾走して叫んでみればいいさ。とでも言わんばかりの破滅的ポジティブシンキング。決して同意はできないが、多少なりとも感ずるところはある。
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