栗本薫『聖者の行進 伊集院大介のクリスマス』
2005年3月10日 読書名探偵に届いた死の贈り物(クリスマス・プレゼント)名探偵伊集院大介シリーズ最新刊。
かつて一世を風靡したゲイクラブで恐喝事件が続発。だが、小さなゆすりの裏に潜む悪意が伊集院大介を動かした。
樹(いつき)が20年ぶりに再会を果たした「巨大なドラッグクイーン」ジョーママは客がゆすられていることに悩んでいた。店自体も経営難に陥っている。トラブルの裏には重大な秘密があると直感した伊集院大介は、Xmasで賑わう六本木の街へ向かった。
近頃の栗本薫の作風は、思い切り「同性愛」の方向である。
もともと、その傾向はあったのだが、最近はタガが外れたように突っ走っている。特に最近の「グイン・サーガ」は酷かった(若干軌道修正がなされたようだが)。
今作も男装の麗人?をはじめとして、その界隈の方々が出るわ出るわのオンパレード。未知の世界に、読んでいて軽い眩暈を憶えるほど。
「探偵小説」としてのスタイルがかろうじて保たれているものの、人生観の独白のような調子で物語性は希薄になっている。もっとも、作者好みのモチーフだけに、力の入った文章はさすがと思わせるものがある。感情というか情緒的な文章が多く、その界隈で生きてきたキャラクターの人生観や達観が行間にあふれている。
この手の話は別口でやっていただいて、伊集院大介にはもっと名探偵らしい活躍をしてもらいたいものだ。
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