落語専門誌の編集部に配属された間宮緑に落語がらみの騒動が持ち込まれる。「名探偵」でもある牧大路編集長とのコンビで展開する、バラエティに富んだ作品5編を収録した、落語シリーズ第3弾。
今回は、はっきり言って不満が多い。
1作目の短編集『三人目の幽霊』程のインパクトもなく、2作目の長編『七度狐』程の密度もない。5作の短編はどれも趣向が凝らされていて、物語それ自体は悪くない出来である。
しかし、落語にネタを求めるあまり、落語解説的な文章が散見され、非常に興冷めである。もちろん、落語の解説をしなければ物語を味わうことができないので、解説は必要だ。問題は解説と物語の配分の問題であり、文章の紡ぎ方の問題である。探偵役である編集長及び女性編集者のキャラクターが描かれず、あくまで「探偵役」という記号でしかないのが残念である。ミステリ的評価としては、それでなんら問題は無いのかもしれないが、ひとつの物語としてみれば、やはりやや無味乾燥的である。
端的に言えばもう少し叙情性が欲しいということになるだろうか。北村薫「私」シリーズのような傑作があるだけに、この差は大きいと思われる。(もっとも、「私」シリーズは落語に限った話ではないので、同ジャンルとするのは乱暴ではあるが。)

残念ながら、過去2作をこえる短編集ではなかった。残念な一冊。
期待が大きかっただけに、少々厳しい意見となったが、
次はぜひ1作目を上回るインパクトと、物語としての面白さをお願いします。

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