そのデパートの屋上では、いつも不思議な事件が起こる。飛降り自殺、殺人、失踪。ここに、何があっても動じない傑物がいた。人呼んでさくら婆ァ、うどん店の主である。今日もPHSの忘れ物が一つ。奇妙なことにそれが毎日、同時刻に呼出音だけ鳴るのだ。彼女の手が空いた時間帯に、まるで何かを伝えたいかのように…。屋上の名探偵さくら婆ァの奮闘ミステリー。連作ミステリ。ミステリ要素はやや低目か。デパートの屋上という限定空間で様々な時間を扱うのはさすがだが、登場人物があまりにもお約束すぎる。無機物を語り役に据えるのは興味深いが、そのパターンが続くのはやや興ざめ。全作品を通して1人(1台か?)でも良かったのでは。もっとも、語り役と探偵役は別なので、誰がやっても大差ないといえばそれまでだが。
人情味あふれる登場人物とミステリ風味のストーリー。
読後にはちょっとしんみり悲しくなる、そんな一冊。
コメント