仲間の声に導かれて僕らは強くなる―植物人間を覚醒させる人の噂と、奇妙な誘拐事件を結ぶ「ハヤブサ」というキーワード…「見えざる力」を駆使して試練を乗り越える子供達の友情と勇気を描くファンタジック・ミステリー。
幾つかの「点」から語り始められた物語が次第に接近し、次々に繋がっていく。記述の主客は入れ替わり、時間の流れも前後しつつ物語が語られていく。

こう書くと叙述ミステリのようだが、本作はファンタジー。謎解きは無粋で、物語の縦糸と横糸がどのようなタペストリーを描き出すかを胸躍らせつつ眺めるのが吉。ややもすればご都合主義的な展開だが、書き出される「運命」という言葉の信憑性を損なっていないのは展開のダイナミズムによるところか。

善人ばかりが登場するストーリーは、私のようなひねくれ者には嘘臭く見えるが、これはそういう物語である。大人も子供も楽しめる一冊ではないだろうか。もしかしたら、映画化しても地味に良い感じになるかもしれない。

個人的に気に入ったので、同じ作者の既刊『空を見上げる古い歌を口ずさむ』も探してみるかな。

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