あの夏、青沢家で催された米寿を祝う席で、 十七人が毒殺された。ある男の遺書によって、一応の解決をみたはずの事件。町の記憶の底に埋もれた大量殺人事件が、年月を経てさまざまな視点から再構成される。
著者の既刊『Q&A』と似た感じで、誰かが誰かと対話している地の文のみでストーリーが展開する。地の文のみで対話している「誰か」の存在を濃厚に醸し出す筆力はさすが。視点の移動(主客の変更)による物語の多角的な表現も絶妙。

物語が不鮮明なまま終了するのも著者の持ち味のひとつだと思うが、今作も真相は語られず、読了後に真相についてぐるぐると考えてしまう。この「考えてしまう」も恩田作品の魅力のひとつだろう。

ちなみに、装丁も凝っていて表紙を開いて数ページで、おぉっと思ってしまった。思わず唸ってしまうほどの凝り様。

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