梨木香歩『ぐるりのこと』
2005年2月16日 読書もっと深く、ひたひたと考えたい。生きていて出会う、一つ一つを、静かに、丁寧に。著者が訪ねた土地の思い出、センセーショナルな事件とそれに対する社会の反応への想い等を綴ったエッセイ。
イギリスのセブンシスターズの断崖でドーバー海峡の風に吹かれながら友と交わした会話、トルコのモスクでのへジャーブをかぶった女たちとの出会い、イラク戦争の衝撃、少年少女による殺害事件への強い思い――喜びも悲しみも深く自分の内に沈めて、今いる場所から考えるエッセイ。
イギリスやトルコを訪ねた際の思い出もあり、こういった背景から『村田エフェンディ滞土録』のような作品が生まれるのかと、納得。また、「境界」とその向こう側を考える考え方、感じ方は共感するともに、敬意を表したい。
著者の想いが、じんわりと心にしみるような読後感が心地よい一冊。
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