あなたは知っていますか、風の色を、森のにおいを小川のメロディーを。永遠だけど永遠ではない、ずっと昔からの住人たちのことを…。3人の少女が精霊に出会い、失われていく自然の素晴らしさに気づく長編ファンタジー。
第一印象は、児童文学風に自然破壊への警鐘を鳴らす本?だった。病弱な心優しい少女、ピアノの練習に没頭しながら情熱のない少女、田舎を厭い都会に憧れる少女。3人の視点からみた世界は、それなりにリアリティがあると思う。しかし、物語り全体は薄っぺらい絵空事に感じられた。曰く、自然を大切にしましょう。

しかし、その印象は物語の終りとともに、やや異なったニュアンスに変わる。

「自然は人間の手で破壊される。」数年を経て、その現実を3人の少女は目の当たりにする。
物語の終りには、自然の尊さ、自然が失われる悲しみ、自然破壊への警告……それらのキレイゴトを飲み込んで、「では、どうするのか?」が問いかけられる。失われる自然に涙を流す。声高に自然破壊の危険性を叫ぶ。黙々と木を植える………「どうするのか?」はひとそれぞれだろう。物語の結末には、単なるキレイゴトではなく、悲しい結末でもハッピーエンドでもなく、厳然たる「現実」が読者の前に提示される。
ファンタジックな内容とは裏腹に、あらためて考えさせられた一冊だった。

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