米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』
2004年12月30日 読書恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生の男女ふたり。ふたりは手に手をとって清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、ふたりの前には頻繁に謎が現れる。名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に迫られてしまう彼は、果たして小市民の星を掴み取ることが出来るのか?『氷菓』『愚者のエンドロール』同様、青春小説とミステリとが絶妙にブレンドされている。
「日常の謎」を解くミステリといえば、北村薫「円紫師匠と私」シリーズや、北森鴻「香菜里屋」シリーズ(暫定名称)などが思い当たるが、米澤穂信は、それらよりライトノベルの傾向が強い。
この際、ジャンルや分類はどうでも良いのだが、(いかにもライトノベルらしい)青春小説としての完成度の高さも本書の「味」であろう。
さらりとした文章で、個性際立つ登場人物を描く。
一見地味だが、きちんと良い仕事をしている。
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