本多孝好『真夜中の五分前 side-A』
2004年12月8日 読書僕は、大学生の頃に恋人を交通事故で失い、以来きちんとした恋愛が出来ないでいる。社会や他人と少しだけずれて生きている。そんな時、一卵性双生児の「かすみ」と出会う。「かすみ」と「ゆかり」は、子供の頃、親を騙すためによく入れ替わって遊んでいた。しかし、それを続けるうち、互いに互いの区別がつかなくなってしまったという。そんなかすみを支えているうち、お互いの欠落した穴を埋めあうように、僕とかすみは次第に親密になっていく。恋愛小説。続刊『side-B』と2部構成。
主人公が理性的というか、感情がやや欠落気味。極まった諦観は一種、壊れているかのようにも見える。いや逆か。壊れている状況は一種、諦観のようにも見える。のか。
人の命、心の傷。失われた時間、いま生きている時間。
大切な人の命が失われても、心に傷を負っても、それでも時間は流れていく。
非常に読みやすい文章。個人的に会話応酬型の文章は好みじゃないのだが、少し洒落ていて小気味良く交わされる会話は、楽しく読めた。これまた個人的に、会話文が巧いと思うのは村上春樹だが、そういえば、全体の文体と言うか雰囲気も似ているような気が。
#『side-B』は9〜11日の出張中に読む予定。
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