3冊まとめて再読。
『六番目の小夜子』とも『麦の海に沈む果実』とも少し異なる、
青春ミステリとでも言うべき、少女達の物語。
3冊で3部構成。
3人の少女が1冊ごとに語り手を代わりながら、夏の日の10日間を語る。

それぞれの語り手が語る物語を俯瞰し、つなぎ合わせる事で物語の真相が見えてくる。
ある人はさらりと語った情景でも、別の語り手には絡み合う感情が見えている。
そして、散りばめられた思わせ振りな謎も、見事に収束して真実の物語を形作る。
個人的には、構成の上手さは恩田作品の中でも最高レベル。
加えて、文章から受けるイメージの清清しさ、清冽さも美しい。

3人の語り手には3人それぞれの真実の物語があり、
それは確かに登場人物個々人にとって、真実の物語である。
そして、読者には俯瞰者にしかわからない真実が伝えられる。

そう、各巻の冒頭に掲げられたあの言葉に嘘はない。
「今はもうない、あの蛇行する川のほとりでの少女たちの日々。
誰も知らないある物語を、今、あなただけに。」

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