『図書室の海』所収の「ピクニックの準備」で予告されていた長編。
某進学校で行われる、80kmを夜通し歩くという「歩行祭」。
高校3年生の主人公達の姿が、生き生きと描かれている。

ホラーでもファンタジィでもなく、ミステリでもない。
純粋なスクールライフの物語。
スクールライフといっても、「ただ歩くだけ」の2日間ではあるが。
主人公をはじめ、主要な登場人物は男女とも、生き生きと格好良く描かれている。
登場人物は高校生活最後のイベントとして(歩きながら)、悩み、考え、友を想い、歩き続ける。
テンポの良い会話の応酬、ふと漏らす本音や、照れ隠しの軽口。
そこにノスタルジックな輝きを感じてしまった。
高校生活最後のイベント。ハイにならないはずがない。
不思議な出来事も、事件もなく、主人公達は歩き続ける。
交わされる会話の端々に、少しづつ本音をのぞかせながら。
抱えた感情の重荷を少しづつ軽くしながら。

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