恩田陸の新刊。
映画『去年マリエンバートで』へのオマージュ的作品。
映画を知らない私には、引用文が多く、やや読みづらく感じた。
映画を知っている人には、また違った印象があるのだろう。

恩田陸お得意の、章ごとに視点が変わるスタイルで物語は進む。
瀟洒なホテルで何が起こったのか?あるいは何もなかったのか?
視点が変わるたびに登場人物の印象が変わり、時勢は行きつ戻りつして
幻想的な物語を紡ぎだしている。

章が変わるたびに、「おや?」「あれ?」と首をかしげながら、
ぐいぐいと物語に引っ張り込まれていく。この吸引力はさすが。
楽しんで一気に読んでしまった。

巻末のインタヴューでも触れられているが、
以前の「風呂敷の畳み方が下手」な終わらせ方よりも、
昨今の「風呂敷は広げたまま、いやむしろ、まだ広げる」スタイルの終わり方の方が、
恩田陸には似合っているような気がする。

コメント